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イベント開催報告

 

【2025年11月特別イベント②】倉敷の酒蔵と美観地区を訪ねる旅

 

実施日時:2025年11月14日(金)〜16日(日)

 

参加人数:10名

 

メンバーの大半が乗るフライトが大幅に遅れ出鼻を挫かれたり、現地での交通機関の乗り継ぎが危うくなったりと、スリル満点(笑)の展開が多い旅でしたが、それも楽しい思い出になってしまうほど、愉快な仲間たちとの珍道中でした。

 

お陰様で3日間とも好天に恵まれ、ぽかぽか温かい小春日和のもと、大過なくツアーを終えることができました。

 

今回訪ねた蔵では、いずれも独自の工夫を凝らしながら、限られた経営資源を充分に活かし良質のお酒造りに取り組まれている様子をうかがい知ることができました。

 

それぞれの訪問先などについて、3日間の行程に沿って、以下ご報告いたします。

 

 

11月14日(金)

 

フライトの遅れにより、空港からの移動後の時間がなくなってしまうのではないかとの懸念も杞憂に終わり、銘々が荷物を宿に預けたり昼食を取ったりと、それぞれの所用を済ませた後、午後一番に倉敷駅で一次集合。

電車で20分あまりの隣町、岡山市内にある宮下酒造へ。

14時前に「独歩館」前で全体集合。大阪から駆け付けた参加者の方、初日の案内役を務めてくださる岡山在住の方と合流しツアーがスタートしました。

 

14:00 宮下酒造(極聖)

https://www.msb.co.jp/

岡山県岡山市中区西川原184

 

宮下酒造さんは大正4年(1915年)の創業。看板銘柄「極聖」の日本酒のほか、ビール、ウイスキー、ジンなど、醸造酒、蒸留酒、リキュールを幅広く取り扱う総合酒類メーカへと発展してこられました(年間生産量は非公表)

 

ここでは、様々な酒類の主な製造設備と製造工程の説明を受けました。

 

なお、大谷翔平選手がロバーツ監督の誕生日に贈ったと報じられたお酒は、この蔵で造った、県産雄町米を使った精米歩合7%の「純米大吟醸 MIYASHITA ESTATE Aji 720ml」 と「純米大吟醸 MIYASHITA ESTATE Kaori 720ml」だそうです。その小売価格は、何と1本11万円!! 

その香りは、これまでに体験したことのないような素晴らしいものでした(さすがに試飲はさせてもらえませんでした(笑))

 

1時間あまり、ここで見学し買い物を済ませた後、電車で倉敷に戻るのですが、驚いたのは、その混雑ぶり! ちょうど電車通学の学生さんたちの帰宅時間と重なり、まるで朝の山手線の通勤ラッシュのようでした。

​​​​

倉敷に戻り、次の訪問先、森田酒造さんに向かいます。

美観地区から一本東に入った、老舗が集まる本町通商店街は、江戸時代から幕府天領として産業が栄えた、いにしえの街の風情を感じさせます。

その一角に森田酒造さんの蔵があります。

 

16:00 森田酒造(萬年雪)

http://www.moritasyuzou.co.jp/

岡山県倉敷市本町8−8

 

明治42年(1909年)創業。明治から大正にかけての時期は国税収入の多くを酒税が占めていた時代で、政府の促進策も功を奏して日本酒造りへの新規参入が相次いだ時代です。森田酒造さんも、そうした酒蔵のひとつです。

老舗の大店の面影を色濃く残す町家造の建物の、制約の多い空間の中で、工夫を凝らしたレイアウトが印象に残る蔵です。

そして、この蔵は「倉敷アイビースクエア」と隣接していて、(同施設内にローソンがあることから)「日本で一番、ローソンに近い酒蔵」なのだそうです

 

ここは、全国でも珍しくなった全量槽搾りの蔵で、特徴的な特大サイズの槽は60年前に大阪の鉄工所で作ってもらったとのことです。ちなみに、杜氏の秋山洋祐さんはヤブタをこれまでお使いになったことがなく、使い方をご存知ないとのことです。なお、この槽は2020年5月に産業遺産学会より「推薦産業遺産」に認定されたそうです。

 

蔵人は3.5人(常勤3人と繁忙期の臨時スタッフ1人)で年間約300石を生産されています。

杜氏の秋山さんは蔵人としての経歴32年(うち杜氏歴17年)のベテランで、現在は備中杜氏の第一人者です。

ちなみに備中杜氏の歴史は全国で2番目(南部杜氏より古い!)だそうです。

 

蔵の中をくまなく見学させていただいた後、敷地内にある、代々受け継いでこられた立派な庭園と和室を拝見し、100年を超える歴史の重みを受け止めた後、蔵内に戻り試飲へ。杜氏さんにお酒の解説をしていただきながら、たくさん試飲させていただきました。

 

 

この蔵では、県産米の使用にこだわっておられるそうです。ただ、毎年新商品を開発しているなか、雄町で純米大吟醸酒を造るのは今期が初めてとのことでした。今後の発売が待たれます。

日頃、関東圏で目にすることのない稀少な銘柄のお酒ですが、隣に蔵元さん直営の土産物屋兼販売店があり、地元産を中心とした酒肴とともに、「萬年雪」のラインナップがほぼ全て揃っています。ここで銘々の買い物を済ませた後、美観地区の夜景を見物しつつ懇親会場となるお店へと向かいました。

 

18:00 結団式(懇親会)@地酒と郷土料理さわらや

https://www.kurashiki-tabi.jp/eat/eat-35060/

岡山県倉敷市本町3-12 あちの郷 B棟

 

この地方特産の鰆のお造りや天ぷらなどの料理を肴に、地酒ほかの飲み物を酌み交わし親交を深めました。

そして、その後2次会以降は、2~3のグループに分かれて思い思いの飲み歩きを楽しみました。

 

 

11月15日(土)

 

2日目は団長が10年来のお付き合い(人的、商品面、双方で)をさせていただき、この地方の銘柄で最もなじみ深かった2軒の蔵元さんを訪ねる日です。

長年の念願だった両蔵の訪問が仲間たちと一緒に叶えられると喜び勇んで集合し、活動開始したのですが・・・

 

この日も出発早々に波乱含みの展開。新倉敷駅から路線バスに乗り換えるのに、10分の乗り継ぎ時間があったはずが、電車が9分遅れ! 

足に自信のあるメンバーがダッシュしてギリギリのタイミングでバス停にたどり着き、まさに発車しようとするバスを止め、キレる運転手さんと絶妙の掛け合いが繰り広げられました(笑)

「他のお客さんに迷惑だ!」「全部で10人。あと1、2名なので待ってくれ。ほら、あそこに見えているでしょ」「バスが遅れても電車は待ってくれないのに・・(ブツブツ)・・」

で、無事全員乗車し、隣町の浅口市寄島町へ(ちなみに、バスの乗客は私たちを含めて全部で13名だけなのでした。「大口顧客」をもう少し大事にしてほしいものです(笑))

爽やかな秋晴れの空のもと、温かい日差しに照らされた穏やかな瀬戸内の風景を眺めながら、しばし心地よいバスの旅を楽しました。

 

寄島は牡蠣養殖を始めとする水産業や醸造業が盛んな町です。

ここの停留所で下車し、徒歩で嘉美心酒造さんに向かうはずが、なんと蔵元の藤井進彦さんが直々にバス停までお出迎えくださっていて、恐縮いたしました

 

10:30 嘉美心酒造

https://kamikokoro.co.jp/

岡山県浅口市寄島町7500−2

 

寄島は備中杜氏発祥の地だそうです。

江戸時代からの伝統を受け継ぎ後世に伝えることに注力し、昭和初期には「寄島酒造研究会」が発足。

約500人(ピーク時には延べ2,000人以上も!)の杜氏と蔵人が研鑽と交流の場として集まってきていたとのこと。

「寄島酒造研究会館」の跡地が嘉美心酒造さんの蔵に隣接して残されています。

 

嘉美心酒造さん自身は、大正2年(1913年)の創業で、この地域では比較的新しいほうです(とはいえ、一世紀以上の歴史!)

創業以来、最高の品質を追求し、戦中・前後の「3倍増醸酒」が主流となっていた時代にも米を使い惜しみせず、常に「米旨口」の高品質の酒造りを貫き通されてきた蔵元さんです。

昭和45年(1970年)、まだ日本酒が生産・出荷量のピークを記録していた最盛期の時代に、先々代(藤井さんの御祖父様)は、現在「特定名称酒」とされているような良質のお酒が選好される時代が来ることを予見して、酒質を最高の状態に保てる環境を得るために、現在、仕込み蔵や貯蔵蔵としてフル稼働している「秘宝閣」を建てられました。

ここでは、温度管理と空気清浄が徹底されていて、安定した酒造りのための環境が確保されています。

 

また、60kgの米を2分間隔で自動洗米・浸漬できるライン、効率的な空気の流れを取り込む放冷機、移動用キャスター付きの麹米用大箱など、オーダーメイドや手作りの、よく工夫された機能的な設備と、その配置が強く印象に残りました。蔵人は4~5名で、年間延べ60本のタンクを使用し生産量は1,500石とのこと。人手が少ないなか、省力化と効率化を考えた仕組みで対応されています

 

余談ですが、屋上からの眺めが最高で、寄島の集落や遠くに見える瀬戸内海、背景にはなだらかな丘陵が広がり、暖かな日差しのもと、心が洗われます。

最盛期には1万人近くいた人口も、今は6,000人程度まで減ってしまったそうです、

それでも、この蔵元さんでは地域を代表する酒蔵として、年に4回「蔵祭り」という蔵開きイベントを行っておられるそうですが、毎回かなりの数の人が集まるようです。なかでも春(4月)の回は特に規模が大きく、4,000人もの方が来場されるとのことです。

 

蔵見学、試飲、買い物を済ませた後、蔵元さんに車2台で送っていただき、昼食を取るお店へ向かいます・・・

 

正午頃~ 昼食@漁八(*)

https://uohati.com/

岡山県浅口市寄島町3981-18

 

この日の昼食は地元の人の支持の厚い魚介類の料理屋「漁八」さんで酒と肴を堪能しました。

 

その後、路線バスで次の酒蔵へ向かうのですが、乗ったバスがなんと、なんと!!

朝と同じ人が運転手さんではないですか!!!

 

「また、よろしくお願いしま~す」と明るく挨拶して乗り込みますと、向こうも別人のように、とても愛想の良いご対応でした(笑)

 

そして、続いては・・・

 

14:00 菊池酒造(燦然)

https://kikuchishuzo.co.jp/

岡山県倉敷市玉島阿賀崎1212

 

菊池酒造さんは明治11年(1878年)の創業。

当時、この玉島地区は千石船が行き交う港町として栄え、同業者がたくさんあったそうですが、そのなかでも一段と輝くようにとの思いから、酒銘を「燦然」と名付けられたそうです。

​​​​​

現在は、蔵人6名で年間600石を造っており、そのうち7割以上が吟醸系。普通酒は2年に1回くらいしか作らないとのこと。

総じて、なめらかな旨味とキレのよさが共存する、とても飲みやすいお酒を造っておられます。

 

こちらの蔵元さんでも、最新鋭の機材を採り入れて、安定した品質のお酒を効率的に造ることに注力されていることが、よくわかりました。

 

興味深いトピックとしては、先代(現会長兼杜氏)が音楽家としても活躍されていて、音の周波数の変化が酒質に与える影響を追求し、オンキョーとコラボでプロジェクトを企画し始められたとのこと。これは今でも続いていて、同蔵は「モーツァルトの流れる酒蔵」として知られています。

 

 

(ご参考)酵母にモーツァルトを聴かせて造る奇跡の酒 倉敷管弦楽団常任指揮者で杜氏の菊池東さん 一聞百見 - 産経ニュース

 

 

見学、試飲、買い物の後、暇乞いをして、記念に集合写真を撮ろうとしていたところ、なんと小学校の先生が生徒さんたちを連れて蔵に向かって歩いて来られるではないですか!

聞くところでは、休みの日を利用しての、社会見学の一環なのだそうです。この子たちの将来が楽しみです。日本酒をたくさん飲む大人になってほしいと願うのでした(笑)

 

蔵元さんに車2台で新倉敷駅まで送っていただき、電車で倉敷へ。

往路同様、車内は意外と混んでいました。

 

倉敷に戻り銘々のホテルで休憩したり散策した後、食事会のお店に集まりました。

 

18:00 夕食@倉敷個室居酒屋 藤と川蝉

https://www.kurashiki-tabi.jp/eat/eat-35061/

岡山県倉敷市鶴形1-1-20

 

お造りや天婦羅など季節の料理と地酒を楽しみました。

 

 

そして、二次会は地元の町興し団体が運営する居酒屋「立ち飲みカケハシ」で、まだ飲んでいない地元のお酒とおでんを賞味。

 

立ち飲み処 カケハシ

https://standingbar-kakehashi.studio.site/

https://tabelog.com/okayama/A3302/A330201/33020683/

 

その後は、例によって三々五々、思い思いの場所で最後の夜を楽しんだのでした。

 

 

11月16日(日)

 

3日目は倉敷美観地区の市内観光等に充てる日です。

朝10時に大原美術館に集合することだけを示し合わせて、あとは原則自由行動としました。

 

午前中は大原美術館の素晴らしいコレクションを、たっぷり時間をかけて鑑賞。

なかでも、つい最近、修復作業(*)が終わり再公開されたばかりの、エル・グレコの「受胎告知」を鑑賞できたのは、想定外の幸運でした

 

*ご参考)大原美術館のエル・グレコ《受胎告知》66年ぶりに修復 〜 400年以上前に描かれた絵の尊い美しさがよみがえる - 倉敷とことこ

https://kuratoco.com/ohara-elgreco/

 

その後は、銘々の予約便に合わせて帰路につくまで、観光や食べ歩きを思い思いに楽しみ、日常へと戻っていきました。

 

倉敷は、人口50万人弱の地方都市ですが、街に活気が感じられます。地元の商店街も現役で頑張っておられる様子です。

最近、人口が微減傾向に転じたようではありますが、全国的に少子化の影響下にある中では、健闘されているほうではないでしょうか?

倉敷紡績の創業家、大原家を中心とする地元有力者のリーダーシップのもと、産業と文化の振興に力を注いでこられた結果が今に繋がっているのではないかと思いました。

 

文責: 団長(理事長) 桐村康司

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