イベント開催報告
【2024年7月特別イベント】愛媛の酒蔵巡礼の旅
猛暑の中、7月26日(金)~28日(日)の3日間、団員3名、一般の方4名の計7名で愛媛県の6蔵の酒蔵を巡るツアーを実施しました。
以下に、ツアーでの主な活動内容をご報告致します。
行程日時:2024年7月26日(金)~28日(日)の2泊3日
訪問した酒蔵:
・雪雀酒造(雪雀) 松山市(旧北条市)
・首藤酒造(寿喜心)西条市
・石鎚酒造(石鎚) 西条市
・八木酒造部(山丹正宗)今治市
・酒六酒造(京ひな)内子町
・養老酒造(風の里)大洲市
今回の酒蔵さんの選定、アレンジ等は、内子町の横田商店(地酒店)の横田光敏社長によるものです。
また、ツアーに際しては、スムーズに移動できるよう、当団として初めてジャンボタクシーをドライバー付きで3日間チャーターしました。
◆初日(7月26日(金))
羽田発9時40分のANA585便で、大方の参加者が現地に向けてフライト。しかしながら、同便の搭乗口が羽田空港第2ビルのサテライトエリアのため、乗員の遣り繰りその他で大幅に遅延となり、11時10分松山空港着が、12時近くになってしまいました。
松山空港にて、アテンド役の横田商店・横田社長と合流し、ジャンボタクシー(前道後タクシー)に乗車し、まずは、松山名物の「鯛めし」の昼食の為、旧北条市にある、鹿島へ移動。
鹿島へは、対岸から渡船に乗り、お店(太田屋)に到着。鹿島(島)から突き出した海の上の建物2階へ上がり、鯛めしのセットとビール等で、遅めの昼食を堪能し、対岸にある、旧北条市(現松山市)柳原の雪雀酒造さんへ移動。
●雪雀酒造株式会社(創業:1915年)
https://yukisuzume.com/
初代と親交のあった当時の首相・犬養毅氏(後の2.26事件で暗殺される)から「雪は昔から豊年の瑞兆、酒の清らかさにも通ずる」とすすめられ、現在の酒銘『雪雀』が誕生したそうです。(以上、同社Webサイトから一部抜粋のうえ編集; 上記の他、蔵の魅力を伝える情報がWebサイトに詳しく掲載されていますので、よろしければご覧ください=以下、他の蔵についても同様)
現在、雪雀酒造さんは、3名で日本酒造りを行い、生産石高は約400石。
杜氏の徳永良平さんに酒蔵内を丁寧に説明して頂きながら見学し、その後、試飲をさせて頂きました。
今年(令和6年)の新酒鑑評会にて金賞最高位を受賞したものから数種。
この金賞最高位を獲得した日本酒は、100年以上の伝統を誇る酒蔵が愛媛県産·山田錦を100%使用し、精米歩合38%まで警沢に磨き上げて生み出した純米大吟醸。
心地良いアタックでなめらか、旨味(出汁)のようなニュアンスが有り。素晴らしいものでした!その他の日本酒もアルコール度14%とやや抑え目にして、日本酒度も+3~8と、いずれも辛口の仕上がりで、飲み飽きしない食中酒として、料理と一緒にスイスイ進んでしまいそうな酒質です。
初日は、この雪雀酒造さんのみで、訪問後にホテルにチェックインし、温泉に浸かったり、部屋で相撲中継を観たり、銘々の寛ぎの時間を楽しんだ後、夜はツアー参加者一行で松山市中心部の大街道エリアの「かどや大街道店」へ。宇和島発の、和食中心のチェーン展開のお店です。宇和島周辺の魚介類を中心に、愛媛ならではの料理(かまぼこ、じゃこ天、宇和島鯛めし等)に合わせ、愛媛県内の日本酒を、今回見学しない酒蔵11蔵のものを中心に、少しずつ愉しみました。
https://www.kadoya-taimeshi.com/
◆2日目(7月27日(土))
2日目は、ホテル(ドーミーイン松山)を8時30分に発ち、首藤酒造(寿喜心)、石鎚酒造、八木酒造部(山丹正宗)の3蔵を訪問しました。
ジャンボタクシーにアテンド役の横田社長にも同乗頂き、松山自動車道にて西条市へ。
最初は、首藤酒造/寿喜心を訪問。
●首藤酒造株式会社(創業:1901年)
http://sukigokoro.co.jp/
(壽㐂心とは | 首藤酒造株式会社 Ⓡ 壽㐂心 SUKIGOKORO
https://sukigokoro.official.ec/p/00001
(蔵の魅力を伝える情報がWebサイトに詳しく掲載されていますので、よろしければご覧ください)
迎えて頂いたのは、男子三兄弟三男の首藤 茂専務(東京農業大学醸造学科 (現・応用生物科学部醸造科学科) 卒)
首藤専務に丁寧にご説明頂きながら酒蔵内を見学しました。
杜氏を雇わず、三兄弟で1種ずつ丁寧に仕込み、日本酒造りをされています。
生産石高は、僅か250石程度。
酒米の種類は多く、山田錦、五百万石、雄町、松山三井、しずく媛、ニコマル等。
精米は、JAのライスセンターに委託されているとのこと。
試飲では、5種類の日本酒を頂きました。どのタイプも概ねアタックがやや甘めに口中に入り、中盤から後半にかけて、旨味等が拡がり、心地良い余韻が有り、切れ味が良くやや辛口に仕上がっています。飲み飽きしない食中酒タイプです。
本醸造(アルコール天添加)のタイプは、通常三段仕込みのところ、「四段仕込み」を行っています。
この後、首藤茂専務と共に、西条市の手打ちそばの名店「蕎亭はる」へ移動し、お土産に頂いた寿喜心の純米大吟醸酒を持ち込み、名店の蕎麦と共に愉しみました。
2蔵目は、全国的に知られる石鎚酒造さんへ。
●石鎚酒造株式会社(創業:1920年)
https://www.ishizuchi.co.jp/
(蔵の魅力を伝える情報がWebサイトに詳しく掲載されていますので、よろしければご覧ください)
越智 浩社長と実弟の越智 稔取締役製造部長(お二人とも一級酒造技能士)にお出迎え頂き、早速、酒蔵の見学へ。
平成11年(1999年)に杜氏制を廃止。科学的に丁寧な仕込みを行い、きれいで酸味の比較的しっかりした酒質の食中酒を目指されています。仕込み水は、石鎚山系の超軟水。環境庁(省)主催の「全国おいしい水鑑評会」で2年連続日本一に輝いています。使用原料米の持つ品種特性を把握し、いかにその持ち味である香味を酒(特に純米酒)に反映できるかを考えて日本酒造りをされています。生産石高は、約1,200石。
各種受賞歴は、
・ワイングラスでおいしい日本酒アワード
・インターナショナルワインチャレンジ IWC
・Kuramaster
・ミラノ酒チャレンジ
・愛媛新酒品評会
・高松国税局 清酒鑑評会
・全国新酒鑑評会、他多数
様々なコンクール等に出品し、ほぼ毎年のように受賞されています。
3蔵目は、八木酒造部(山丹正宗)へ。
●株式会社八木酒造部/山丹正宗(創業:1831年)
https://www.yamatan.jp/
(蔵の魅力を伝える情報がWebサイトに詳しく掲載されていますので、よろしければご覧ください)
次に、今治市にある、歴史のある八木酒造部(山丹正宗)を訪問しました。
出迎えて頂いたのは、杜氏(一級酒造技能士)の石田将志さん。
風貌は、落語家の林家正蔵師匠に似ておられます。
酒蔵の建物は、鉄筋コンクリート造3階建て。堅牢な建物の中で、動線も意識し、品質の高い日本酒造りにこだわる様子がうかがえます。
石田杜氏からは、今治の名物の今治焼鳥にも良く合いますとのコメント。
石鎚山系の超軟水の影響で、全体として、酒質はなめらかかつスムーズ。そして、心地良い膨らみがあり、程良い旨味も感じられ、キレ味は良く、食中酒として優れている印象です。
ユニークな日本酒としては、「Jazz Brew 」があります。
「オンキヨーと東京農業大学の共同研究で開発された『音楽加振技術』により、活性化された酵母で仕込んだ純米酒」「蔵元がこよなく愛するJAZZを聞かせることで、より香り豊かで旨味の強い日本酒ができた」との説明通りの味わいです。酸度が1.9なので、洋食系、肉系にも合うニュアンスがあります。
また、有機JASの認定を受けた自然派日本酒の「Organic」は、地元今治産の有機栽培米と、人工乳酸を添加しない室町時代の製法「水もと」から作られたお酒です。
「SDGsを意識し、なるべくお米を大切に扱う観点から、精米は80%」に抑えたとのこと。さらに、ラベルもオーガニックコットンでできた地元の今治タオルを使うなど、こだわりがうかがえます。
乳酸菌由来の爽やかな酸味と、有機栽培によるお米の旨味がしっかり感じられます。酸度も2.7とかなり高いので、中華料理、イタリア料理、フランス料理等にも合うかと思います。
この後、松山市中心部に戻り、アテンド頂いている横田商店の横田社長の経営する、酒販店&角打ち店の「蔵元屋」に行き、先程見学した、「石鎚酒造」の受賞酒6種を角打ちスタイルでつまみと共に頂くイベントに参加し、愛媛県内(主に松山市内)の日本酒愛好家の皆様と大いに飲み、食べ、交流を深めました。
◆3日目(7月28日(日)
3日目(最終日)は、ドーミーイン松山をチェックアウト後、ジャンボタクシーに乗車し8時に出発。内子町の酒六酒造(京ひな)と大洲市の養老酒造(風の里)を訪問しました。
●酒六酒造株式会社(京ひな、吹毛剣等)
https://sakaroku-syuzo.co.jp/
(蔵の魅力を伝える情報がWebサイトに詳しく掲載されていますので、よろしければご覧ください)
生産石高は、200石程度で、ほとんどが、愛媛県内で消費されているそうです。
お酒造りに携わるのは、武知社長、社員1名、奥様の3名のみとのこと。
武知社長は、ソニーの情報システム部ご出身で、酒造りとは無縁の人生を歩んでおられたとのこと。同蔵の先代のお嬢様と結婚された当時は全くの想定外だったそうです。
10年以上前に、先代が急逝されたため酒蔵存亡の危機となり、一念発起、脱サラして同蔵を継ぐことを決心されたそうです。
愛媛大学工学部卒のエンジニアであることも幸いして、科学的合理的な日本酒造りにこだわっておられるご様子です。科学的に良く考えた日本酒造りをされていて、新酒鑑評会等、数多くの受賞歴があります。
武知社長から酒蔵内を丁寧に説明頂き、試飲へ。こちらの酒蔵も今までお伺いさせて頂いた他の酒蔵同様、食中酒として相応しい、飲み飽きしない、料理に合うタイプの日本酒です。アルコールは15~16度程度で、酸度が1.3程度と程良い優しい酸味を感じ、口中でやや膨らみキレ味が良いのが特徴です。
仕込み水は、内子町の水道水をろ過し使用されています。水道水と侮れない、柔らかい良質の水です。
武知社長は「飲んだら食べたい、食べたら飲みたい、そういうイメージの日本酒を目指している」とのこと。
その後、社長にもジャンボタクシーに同乗頂き、内子町の山間部にある石畳地区へ移動。
由緒ある弓削神社に参拝した後、昼食をとりに。蕎麦の栽培から、そば打ち、茹でまで丁寧に仕上げている家族経営の「石畳蕎麦」さんにて、京ひなの日本酒を飲みながら、かき揚げ付のもりそばに舌つづみを打ちました。
その後、今回の酒蔵見学ツアーの最後の酒蔵である、養老酒造(風の里)へ移動。
●養老酒造株式会社(風の里)
https://yoroshuzo.jp/
生産石高は、200石程度。杜氏社長 山内光郎氏
養老酒造の3代目当主で代表取締役兼杜氏。創業以来85年続いた「伊方杜氏」による酒造りを踏襲しながら独自の形を創り出し、2006年1月から自身が杜氏となり酒造りを開始。
2018年7月の西日本豪雨で酒蔵が全壊する甚大な被害に見舞われるが、片付けをしながらすぐに酒造りを再開したことで、地域の災害復興の旗印として「風の里」が注目されている。
※伊方杜氏 愛媛県西部の佐田岬半島に位置する伊方町を拠点としていた杜氏集団で、全国でも有数の歴史を誇る。
(以上、同社Webサイトから一部抜粋; 上記の他、蔵の魅力を伝える情報がWebサイトに詳しく掲載されていますので、よろしければご覧ください=以下、他の蔵についても同様)
養老酒造さんは、2018年7月の西日本豪雨の際に水没し、そこから再建し立ち直った酒蔵です。立て直された建屋内に上手く配置された各種設備を、ご長男で蔵人の山内倫太郎さんに丁寧にご説明頂きました。その後、試飲へ。
仕込み水は、肱川(ひじかわ)の伏流水(軟水)を使用。やや酸度高めの1.4、かつ日本酒度は+6~8と辛口に仕上がっていて、アルコール度数は15~16度。酵母は愛媛酵母のEK-1又はEK-3を使用。
愛媛県の日本酒に共通して、アタックが柔らかく、優しめで、酸度が程良く有り、口中で膨らみ、キレが良いという酒質を備えていますが、ここのお酒も同じ傾向があり、飲み飽きしなさそうです。
全行程が終了し、ツアー一行は、養老酒造さんの後、横田商店に立ち寄り、巡った蔵の日本酒を購入し、
一路、松山空港へ向かいました。
松山空港にて解散し、各々、帰路に着きました。
《総括》
今回の愛媛県酒蔵ツアーは、千駄木の鰻と日本酒の名店である「稲毛屋」さんにて、横田商店・横田社長との出会いが有り、昨年秋から半年以上かけて準備して参りました。横田社長は、愛媛県の日本酒振興のため、東京他日本各地を巡っていて、各酒蔵さんからの信頼、信望も厚く、通常は全く酒蔵見学を受け入れないところも含め、充実の行程を組んで頂きました。
また、当団として、真夏の企画ということと、各酒蔵が距離的に離れているため、松山市内の前道後タクシーさんにお願いし、大型のジャンボタクシーを貸切対応することにしました。そのため、快適な移動も確保され、2泊3日の酒蔵見学ツアーで計6蔵の見学が実現出来ました。この場を借りて、横田商店・横田社長、各酒蔵の社長、杜氏の皆様に厚く御礼申し上げます。
今後も当団は、日本酒の飲み手を拡げ、酒蔵振興のため、様々な企画(イベント)を計画して参ります。蔵人応援団を何卒よろしくお願い申し上げます。
文責 副理事長 對間勝己
構成・追補・編集 団長(理事長) 桐村康司
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